世界に激震が走る

2015年9月14日、科学と物理の両世界に激震が走りました!本当に、揺れたのです。皆さんも地響きを感じましたか?おそらく、それはないでしょう。なぜなら、それは地球の反対側にいる誰かの地団太を感じるようなものだからです。いったい何が起こったのでしょうか?13億光年の距離にある2つのブラックホールの合体により、重力波が0.2秒間、私たちの地球をとらえました。そして、アインシュタインの一般相対性理論で予言されていたこの波が、LIGO(レーザー干渉計重力波観測所)プロジェクトによって、地球上で初めて実験的に検出されたのです。この成果に対し、2017年にはノーベル物理学賞が授与されました。

このような宇宙での大規模な事象を精巧に検出するためには、常に2つの検出器で同時に信号を検出する必要があります。位置特定を行うには、3か所での検出が必要です。実際、コンパスの全方位をカバーするには4つの検出器が必要となります。そこで、宇宙で起こるこういった事象をより多く検出し、その原因や起源についてより正確に説明できるようにするため、検出器のネットワークを構築する作業が世界中で行われています。この科学的努力の最新の成果が、世界で5番目となるLIGO India検出器なのです。

最初の重力波によって、地球に1兆分の1程度の僅かな歪みが発生しました。この想像を絶する小さな長さの変化は、地球と太陽間の距離(約1億5000万キロメートル)が、原子の直径(約100ピコメートル)分だけ変化したことに相当します。このようなわずかな長さの変化の測定には、非常に感度の高い干渉計が使用されます。最大4キロメートル離れた鏡で反射させた2本のレーザービームを交差させ、その重ね合わせを干渉計で測定します。この方法では、鏡の位置のわずかな変化でも検出されます。そのためこれらのレーザーは、光速が一定で、熱や大気のゆらぎの影響を受けない真空中でなければ、必要な感度を得ることができないのです。

LIGOの真空システムを設計したのは、インドプラズマ研究所(IPR)の科学者たちです。課題は大きく、直径1.2mの超高真空(UHV)チューブの中にレーザービームを通さなければなりません。これは競技用プール3杯分の容量に相当し、真空システムとしては世界最大級です。それにもかかわらず、より多くの検出器を常に世界で同時使用できるようにしておくためには、短いメンテナンス間隔とポンプダウン時間での運用が必要とされます。

VAT Solves Vacuum Challenge of the Lgest DVAT、大きさによる真空の課題を解決

VATは、すでに米国で行われた最初のLIGOの開発で、真空システムの設計に関わっています。大きな真空システムでは、可能限り小さな容量への分割が不可欠です。そうすることで、超高真空チューブ内の他の部分をクリーンに保ちつつ、該当箇所に的を絞ってメンテナンスと修理を行うことができるのです。

「VATのバルブを使用した米国の仲間からポジティブな感想を聞いたそうで、2021年初めにIPRから連絡がありました」と、インドにおける真空コンポーネントのVAT販売代理店であるLawrence & MayoのSuman Kunduは振り返ります。「このような大型のバルブを、求められる品質と純度で供給できるのはVATだけだと分かっていました」。

「その後すぐに、19.2シリーズの大型DN 1250 HVゲートバルブが、必要要件を最もよく満たしていることが分かりました」と、VATのセールスマネージャーであるJürg Öhriは説明します。「このバルブは超高真空に対応した仕様で、特許取得済みのVATLOCK技術により、小さな力で確実に閉じることができます。そのため、このバルブはもともと1250mmあるいはそれ以上の高い開口部直径にも対応可能なのです。」

しかし、LIGO Indiaが必要とする要件はこれだけではありませんでした。「超高真空でバルブを使用するためには、エラストマーシールからの残留ガスがシステムを汚染しないこと、またすべてのコンポーネントが最低でも150℃までベイクアウトできるようにする必要がありました」とIPRの真空のスペシャリストは説明します。しかし、ここでもVATは力を貸すことができました。納入されたすべてのバルブに対する明確な残留ガス分析により、なんと170℃のベイクアウト温度まで、その純度を疑う余地なく証明することができたのです。このベイクアウトにより、超高真空へのポンプダウン時間が大幅に短縮します。さらに、バルブアクチュエータもお客様のご要望に応じ、改良が加えられました。

連携が生んだサクセスストーリー

現在LIGO Indiaは建設中で、使用される第一陣のVATバルブがすでに納品されています。「VATの技術的なノウハウと、お客様の要求への柔軟な対応に感謝しています」と、Suman Kunduはこのプロジェクトで得た経験を振り返ります。「現地のローカルパートナーであるLawrence & Mayoを通じて、早い段階からVATの適切な場所に我々の要求を伝えることができました」

「IPRおよびLawrence & Mayoとの協力関係は、当初から素晴らしく、非常に効率的でした。そのおかげで、それぞれの具体的な要求に対して、良い解決策を見つけやすいのです」とJürg Öhriは話します。「結局、私たちの原動力になっているのは、国際的な研究コミュニティから依頼されるこういった情熱的なプロジェクトです。私たちも、我々の世界を動かしているものの正体を知りたいのです。」